第64回高田駐屯地創設記念行事
2014年 04月 20日
昨年夏に旧軍時代からあったという37号、38号隊舎は取り壊され、今年から隊舎があった場所は砂利になっていた。この他にもグラウンド中央に東西にわたって舗装道路が増設され、駐屯地内部は今までとは少し趣の違った感じだ。加えて祝典行事に使用される観覧席は今年からグラウンドの北寄り、南向きに設置されるようになった。ここ数年観覧席はグラウンド南側、北向きに設置されるのが通例になっており、マニアの間からは「祝典行事の背景に妙高山が見えなくなって寂しい」と嘆く声も聞かれていたが、今年からは祝典行事の最中妙高山を望むことが出来る。ちなみに新しく建てられた建物が何なのかは確認できなかった。
中MATの後継として開発されたとはいえ、近年の状況を考慮して対舟艇、対装甲・非装甲車両、対人、対構造物など様々な標的に対応しているとされる。中MATや79式対舟艇対戦車誘導弾、通称「重MAT」が車両から降ろして運用しなければならないことと比べるとこの中距離多目的誘導弾は高機動車に発射機と追尾装置、さらに自己評価装置を一体化したシステムを搭載しているため従来の対戦車誘導弾に比べて非常に機動性が高いのが特徴で、これからの普通科火力を担う存在として期待がかかる。車体後部のアンテナは無線通信用であり、目標評定用のレーダーは使用時に上部から起立する。
今年、あるいは昨年度末に高田に導入されたばかりの車両のようで、車体の塗装はツヤがまだ残っており、ナンバープレートは真っ白であった。よく観察していくと車体自体は高機動車のままで特に改造は施されておらず、高機動車にシステム一式を固定しただけだ。他の誘導弾はそれなりに高機動車の車体に改造が施されていたが、こういったところに金をかけないのは考え方としては正しいだろう。21年度予算で10セットあたり41億円が計上されており、単純に1両4.1億円となる。陸自の車載式誘導弾としては廉価な部類だ。
LAVに固定武装はないが、車体上面ハッチに全周旋回可能なターレットと防楯付き銃架を取り付けることが出来、5.56mm機関銃MINIMI等を据え付けて射撃することができる。01式対戦車誘導弾をこのLAVから射撃するパフォーマンスは、昨年の模擬戦闘訓練でも紹介されていた。装輪車らしく最高速度100km/hを発揮するが、総重量は約4500kgと重く、1/2tトラックと比してフロントの視界が悪い、乗車時の快適性が悪い等の不満も出ているようだ。
弾倉なしの状態で重量は6.9kgと比較的軽量。発射速度はベルト給弾時が725発/m、マガジン装着時が1000発/m。この装備については製造元の住友重機械工業では過去数十年間に渡り検査データを改ざんし、要求性能に満たない機関銃を防衛省に納入したとして指名停止処分されているが、部隊では特に変更なく使用され続けている。
発射筒を保護するため移動時には前後に黒い発砲スチロールが取り付けられているが、発射時はもちろん取り外す。
走行を有する唯一の施設科車両であり、災害派遣や海外派遣の実績もある。近年は装備の更新時期が来ていることもあり、様々な機能を併せ持った施設作業車への更新が進んでいるようだ。全備重量約19.2t。
FH70はもともと欧州で共同開発された榴弾砲であり、メンテナンスの容易さと安価なことから陸自でも導入された経緯がある。完全に自走するための装置は有しておらず74式特大型トラックがベースの中砲けん引車によって移動するが、1800ccのスバル製水平対向エンジンを搭載しており、16km/hの速度で自走することが可能である点が特徴的だ。
最大射程は通常弾で24km、推進弾を使用した場合30kmの長射程を実現している。俯仰角は-5.6°〜+70°、旋回角は56°まで可能。最大発射速度は3発/15秒であるが、持続射撃する際は6発/mが最大発射速度とされている。陸自特科部隊を代表する主力火砲であったがさすがに老朽化が否めず、重装輪回収車の車体部を流用した装輪式の火力戦闘車が後継装備として開発されている。
先代の73式装甲車は結局のところ機甲化に随伴する普通科に優先して配備されたため全国の普通科の機械化を達成するまでは行き渡らず、25mm機関砲と重MATで武装した89式装甲戦闘車は現用主力戦車2両分のコスト高のため北海道の機甲師団にしか配備されなかった経緯があるが、WAPCは民生部品を流用することでコストを下げており、全国の普通科以外の部隊にも幅広く配備が進んでいる点が評価される。1両あたりの単価は約1億円と推定される。
制式化にあたっては特に全幅に留意されており、一般公道走行時に手続きがいらない2.48mに抑えられているため正面からのシルエットは装輪式の装甲車としては非常にコンパクトに見える。路上最高速度は100km/h、乗員が2名と後部乗員席に最大12名が乗車可能。これは他国の装輪装甲車と比しても遜色ない性能だ。武装は本車のように40mm自動てき弾銃を備えたものと、12.7mm機関銃M2を搭載したものが存在する。それぞれ「A型」「B型」と呼称されるが、取付基部が全く異なるためそれぞれの互換性はない。ちなみに調達数に占める割合はA型が10に対しB型は1と言われる。
有効射程は4000mとされ、飛翔速度は約200m/s。有線式の半自動指令照準線一致(SACLOS)誘導方式を採用しており64式対戦車誘導弾の倍の飛翔速度を誇るが、誘導手が目標をとらえ続ける必要があるため、現代の基準では操作員のサバイバビリティには不安が残る。弾頭は対戦車榴弾と対舟艇榴弾を選択できる。
なお、「対戦車隊」として陸自で運用されている隊は、第12対戦車中隊を含めて4個しかない。
10式戦車と言えば言わずと知れた陸自の花形装備である。主砲に44口径120mm滑腔砲を採用、全備重量44tとしながらも最高速度70km/hを発揮。C4Iシステムによってこれまで以上に味方との連携が取れる世界で一番新しい第4世代戦車である。第1戦車大隊では24年12月より運用されている。
一見して74式と同等くらい、スマートに見える印象だ。特徴的なモジュール装甲も実車ではそれほどゴテゴテした感じを受けなかった。車体各部に塗装の剥がれが見受けられたり、現用装備として使用されている感が随所にあふれていた。
今回の展示に際しては車体周囲2mほどにロープを張り渡し、写真撮影はその外側で行ってほしいとの指示だった。さすがに登場間もない装備とのことで人だかりもすごく、細部は観察できないにせよ全体を撮影するには適していたのでこの方法には個人的には賛成だ。ただ模擬戦闘訓練では10式戦車がその機動力を見せつけてくれたのかがとても気になる。
陸自の航空戦力を代表するUH-60JAは米軍のH-60系ヘリを系譜とする多目的ヘリで、救難を主任務とするUH-60Jをベースに、赤外線暗視装置(FLIR)、航法気象レーダー、GPSや慣性航法装置による自動操縦機能に加えて、エンジンの排気口へ装着された赤外線排出抑制装置(IRサプレッサー)やワイヤー・カッター(進路を妨げる電線やワイヤートラップなどを切断する)、チャフ・ディスペンサー、IRジャマーを追加装備して航空輸送にも対応できるよう改良したものである。機体両脇に増槽を追加しており航続距離は1295kmと長大になった。
固定武装はないがキャビンドアに12.7mm重機関銃M2を、5.56mm機関銃MINIMIをキャビンドアとガナーズドアに搭載し、ドアガンとして運用することができる。M2を搭載してのドアガン射撃は高田でもその雄姿を披露してくれたことがある。輸送ヘリではなくあくまで多用途ヘリであり、機体下に車両を吊下したりする運用は行われない。
装備品展示はこれで全てであった。毎年ヘリは3機ほど飛来するのだが、今年はUH-60JAが1機を少々寂しい年になった。1週間前には高田駐屯地に着陸するCH-47JAを目撃しているので、当初参加する予定だったのが何らかの理由で不参加になってしまったのかもしれない。
全体的に空きが目立つ装備品展示となったが、今年は10式戦車が見れただけでも良しとしよう。来年はぜひ10式が模擬戦闘訓練に参加する姿を見たいものである。
by gramman
| 2014-04-20 23:16
| ミリタリー
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