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アオシマ・航空自衛隊 パトリオット PAC3発射機

アオシマが意欲的に展開する1/72スケールの自衛隊装備の最新作が航空自衛隊PAC-3だ。発射装置自体のモデル化は初めてではないが、1/72スケールで、しかも牽引車もモデル化されるのは史上初の快挙だ。



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2009年の北朝鮮飛翔体に対処するための出動によって一躍有名になったPAC-3であるが、本来は「パトリオット」の名前が付された米レイセオン社がMIM-14 ナイキ・ハーキュリーズの後継としてアメリカ陸軍向けに開発した広域防空用の地対空ミサイルシステムである。その中でも特に弾道ミサイルのターミナル防衛を担う存在として改良されたパトリオットを「PAC-3」と呼ぶのである。

弾道ミサイル迎撃用のPAC-3については、米国において弾道ミサイル防衛対応のPAC-3弾が開発を完了した後、日本では日本版弾道ミサイル防衛の1つとして、2007年3月30日に埼玉県の航空自衛隊入間基地に所在する第1高射群第4高射隊に最初に配備された。発射機自体はM902の制式名が付されているとおり、航空自衛隊で運用されているものも日本の法規に対応した灯火類を備える以外は、米国仕様に準じていると推定される。



アオシマでは、そんなPAC-3を立体化。1/72スケールという小サイズながら、箱を開けた時のボリューム感はなかなかだ。全部組み上げると牽引車と発射機を合わせて全長は約225mmと、1/35スケールの90式戦車の車体とほぼ同じという迫力あるモデルに仕上がる。1/35スケールでの再現を、とのリクエストもあろうが、スケールが倍になると単純に全長は約450mmとなり、1/350戦艦大和にも匹敵するくらいのビッグキットになる。おそらく値段は倍では済まないだろうし、展示にも困るのでこのスケールが良い、と勝手に納得した。



航空自衛隊の装備品の塗色というのはなかなか厄介で、光の加減によって全く違う色に見えたりするのがモデラー泣かせだ。資料を見ても画像のホワイトバランスや光の当たる部分や影の部分で色がそれぞれ違うので、なんとなく似た色を塗ることにした。今回選んだのはタミヤアクリルカラーのXF-67 NATOグリーンだ。塗ってみるとこれがイメージにぴったりで、調色せずに全部塗ってしまった。ミサイルの収まる箱、すなわち「キャニスター」は米国からそのまま輸入されるため航空自衛隊の塗色が施されておらず、色調が違うとの指摘があったため、似た色としてこれもタミヤアクリルカラーXF-13 濃緑色で塗った。これも違和感なく仕上がった。

発射台のジャッキの裏部分は航空自衛隊観閲式では真っ黒に塗られている状態であったが、通常は設置する面が地面と擦れるためサビが浮きやすく、資料でも周囲がさび付いた状態がよく見受けられるのでその状態を再現した。くリアルではないにせよなんとなくサビの表現が出来たので、これはこれで満足している。ちなみに塗装は全て筆塗りで実施。筆ムラになる部分はあるが、それは経年劣化による色落ち、汚れ等と割り切ってしまおう。



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発射機とともに、いや発射機以上に話題になったのが牽引車の立体化であった。ボディ自体はベースとなっている三菱ふそう・スーパーグレートであるが、悪路走破性を高めるため総輪駆動のシャシーを採用しており、民生品に比べて車高が格段に高い点が特徴で、キャブ後方のリアフェンダー部分なども民生品では見かけないタイプだ。

デフォルトで付属するデカールは浜松基地の高射教導隊所属の仕様であるが、数字と部隊名に使われやすい漢字が付属するので自由に組み合わせて好きな所属に変更できる。個人的に思い入れがあったので、「入基」「4高」、つまり入間基地第1高射群隷下の第4高射隊所属とした。

ちなみにボーナスパーツとして民生品のスーパーグレートが再現できるよう、通常タイプのフロントバンパーと、クリアータイプのヘッドライトが付属する。シャシー部分は全く違うので単に差し替えすれば民生仕様になるわけではないが、腕に覚えのある方は民生品の再現にも挑戦してほしい。



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発射機本体のジャッキ部分は左右一体で差し替え可能となっており、差し替えることによって簡単に発射状態を再現できる。より大きいスケールなら可動も検討されたのだろうが、1/72では強度に不安が残るので潔く差し替え仕様としたようだ。側面のアンテナパーツも差し替えが出来、それぞれ選択することによって起立状態での固定もラクラクできる。無論キャニスターは360度回転が可能。

キャニスターは最大4基搭載が可能で、キットにも4基付属してくる。しかしながら2009年に実弾を搭載して展開したPAC-3を見るとキャニスターは2基というのが多かったので、資料に即して2基の搭載にとどめた。決して面倒だったからではない。ちなみに模擬弾であるところの「INERT」表記のデカールは付属していないので訓練仕様を再現するには自分で作るしかない。(「INERT」のデカールを封入しないことについて担当者は「なんとなく萎えるので」と説明していた)

発射機のアクスル部分は可動状態に組むことが出来るのでジオラマなどで悪路を移動する光景を再現するにも都合が良さそうだ。タイヤは全てシングルタイヤとなっている。

余談であるが、車体各所に取り付けられた○に「火」の字の標識は、「火薬類の運搬に関する内閣府令」で定められた標識で、弾薬や火薬類を輸送する際には車体の前後左右に取り付けなければならないとされている。これは自衛隊のみならず民間企業、米軍でも例外はなく、街で見かけたら、「弾薬を積んでいるんだな」と思ってもらって間違いない。平時においてこれを装着せずに実弾を輸送することはないので、また北朝鮮の飛翔体発射事案などにPAC-3が駆り出されるようなことがあれば注意して見てもらいたい。



1/72スケールという手を出しやすい大きさで、細かいところを気にせず組めるという点ではおすすめのキットである。アオシマの同シリーズの動向に今後も注目していきたい。
by gramman | 2014-09-27 19:38 | 模型 | Trackback | Comments(0)

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